クールジャズ考!

私、鈴木学は自らの演奏スタイルの模範として、レスター・ヤング(Ts)に深く傾倒すると共に、 レニー・トリスターノ(Pf)の提唱する『クール・ジャズ』スタイルの探求を長年続けてきました。このスタイルをマスターする事で、奏者はジャズ・アドリブをより自由に演奏する事が可能になります。今回はその秘密を紐解いていきましょう。

レニー・トリスターノの「クール・ジャズ」とは?

レニー・トリスターノ

トリスターノ派のクールジャズは、一般によく言われる、音色、表現を抑制気味にする クールジャズの演奏スタイルとは異なり、即興演奏中の全ての音を意識化に置き、あくまでその場の即興演奏としてアドリブに臨む、『クール』な演奏姿勢を目指します。

 

その為に、いかにもジャズ的な表現、例えば、大げさなリズムの強調、皆が共有している如何にもジャズっぽいフレーズを連ねる事を否定します。あくまで、即興演奏に焦点を絞り、瞬間瞬間に奏者のコントロールが行き届いた音を連ねていく事を目指します。その結果として、アドリブラインは強固な、そして、印象としては長めのラインになっていきます。

 

今回ご紹介する、トリスターノの高弟、リー・コニッツの演奏も、そんなクールジャズの演奏姿勢を反映した、即興のスリルに富んだものになっています。そして、同時代のジャズアルトサックス奏者が皆、チャーリー・パーカーの演奏スタイル、 ビバップを追う中、一人全く異なる道を進む孤高の存在として、異彩を放っていました。

何故「クール」を目指すのか?

私が何故クールジャズを探求してきたのかと言えば、どうしても周囲の皆が一様に、パーカー、 ジョン・コルトレーンの模倣をする事に納得がいかなかったからです。

 

もちろん、パーカー、コルトレーンが偉大な存在である事は間違いありません。私自身尊敬しています。それでも、自分がジャズを演奏しようとする際、彼らと同じような演奏を目指す気にはなれなかったのです。だって、彼らの音楽は彼らのもの、自ら即興をするのであれば、自分独自の音楽作りを目指すのがジャズのスピリッツだと思いませんか?

リー・コニッツ

そんな中、初めてコニッツを知った時、もうこれしかないと感激しました。パーカーの模倣ではなく、その場の独自な即興としてアドリブしている録音を聞き、自分の目指す道はこれしか無いと心に決めたのです。

 

『クール』のコンセプトは、アドリブ中に選ぶ音使いを規定しません。演奏姿勢そのものを示しているのも、より自由な即興演奏ができるような、枠組み作り、環境づくりのためです。 ベースの音を先に進ませ、その後に空いた音的スペースを自在に使いながら、即興演奏を進めていきます。広いスペースがあり、ジャズ的なフレージングのステレオタイプに縛らず、歌いまわしの揺らぎ、加減速が許容される為、フレージングの選択の幅が大きく拡がります。

 

私自身、このクールのコンセプトを体得すれば、自分独自のアドリブラインが奏でられる、そう信じて今日まで演奏活動を続けてきました。今だ道半ばだとは自覚していますが、それでも、何とか自分なりのジャズを創り出せつつあるのではと感じています。 それでは、私自身初めて聞いて衝撃を受けたコニッツの演奏を下記にご紹介します。皆さんにも、何か感じていただけたら幸いに思います。コニッツ、素晴らしいですよ!