吹奏楽部=ブラック部活?①

先日、NHKのTV番組「クローズアップ現代」にて、中高部活動の現場で、「ブラック部活」と認定せざるを得ない例があるとの現状をレポートした番組『「死ね!バカ!」これが指導? ~広がる“ブラック部活”~』が放映された事が話題になっています。

中高吹奏楽部の問題が話題に・・

その中で、中高吹奏楽部の中にも「ブラック」な実態が認められると、指摘されています。詳しい内容はリンク先の記事をご覧いただきたいのですが、例えば指導者からの暴言として「ふざけんなよ。(イスを蹴る音)やんなくていいよ。帰れ!帰れよ!(コンクール)1日前にこれなのかよ。」という言葉を浴びせられたという実例が紹介されています。

サクソフォン

もちろん、教育の現場で、このような言葉が不適切であることは言うまでもありません。しかし恐らく、他にも吹奏楽部指導の現場では、同様の「ブラック」な問題の実例が数多く存在するでしょう。

 

私、鈴木学自身、中高と吹奏楽部を体験していますし、プロ奏者になってからも時折、吹奏楽部のゲスト出演など関わりを持つ事はありました。そして、吹奏楽経験者を多数レッスンしています。その経験上、そのような不適切な指導が現場に存在するであろう事は、かなりの確信をもって断言できます。

ただし、私は中高の教員でも、吹奏楽専門の指導者でもなく、町中のサックス(サクソフォン)専門音楽教室の一講師にすぎません。だから、部活動の実態についての踏み込んだ論評は避けます。その代わりに今の立場だからこそ体験できた事実を基に、現代日本の吹奏楽部の問題点を指摘したいと思います。

吹奏楽経験者に共通して・・

鈴木サキソフォンスクールには、中高吹奏楽部を経験した後ブランクを経て、新たにジャズ・ポピュラーサックスに挑戦しようという生徒さんが大勢いらっしゃいます。これまで延べの在籍数で言えば、サックス以外、例えばフルートクラリネットトランペットホルントロンボーンといった吹奏楽で用いる各種楽器経験者も含めると、恐らく数百名単位になるでしょう。そして、その皆さんには共通の特徴がありました。それを列挙すると・・

  • 発音の瞬間を、他の楽器やメトロノームと寸分の狂いもなく揃えなければばならないと思っている
  • 拍の長さは機械的に均等でなければならないと信じている
  • 音符の情報を寸分の狂いもなく音に変換するのが正しい演奏と誤解している
  • 楽譜を読み違える事に対する異常なほどの罪悪感がある
  • 発音ミスをするとすぐに謝ろうとする
  • 周りの音から浮き上がらないように、目立たないように演奏しようとする
  • メトロノーム、足踏み無しではリズムが分からなくなる

等々、他にも色々とあるかもしれませんが、今までレッスンした吹奏楽経験者のうち、わずか数名の例外を除けば、皆一様に同様の状態になっていました。実は、以前ブログ『ジャズアンサンブルとは?』で指摘した通り、ジャズ・ポピュラー演奏に臨む際は、これらの考え方を180度切り替える事が必要となります。少なくともジャズ系の世界では、上記のような考え方は非常識なのです!そのために、吹奏楽経験者は、非常に大きな遠回り、苦労を強いられるのが現実となっています。

伝え聞く話では、ジャズのみならず、一般的なクラシック演奏の場合でも、吹奏楽経験者は類似した問題と直面するとのことです。私には、吹奏楽部が「ブラック部活」かどうかの判定はできません。しかし事実として、吹奏楽の世界で一般に信じられている演奏習慣に基づいて演奏した期間が長いほど、後々吹奏楽以外のジャンルの演奏をする事が難しくなるという現実・・、これは認めざるを得ませんし、中高吹奏楽部が抱える根本的な問題につながっているように思えます。

(次回へ続く・・)