リズムセクションとの関係(前編)

前回のブログ「ジャズ・アンサンブルとは?」で、サックスサクソフォン)等の管楽器はジャズアンサンブル時に「自分の音をしっかり聞くこと」と「自発的に表現すること」の2点が大切であるとお伝えしました。これについてはジャズが元来即興の音楽である、という事実から考えても大変に自然な考え方です。

 

更に言うと、ジャズ・ビッグバンドのパート譜を譜面通りに演奏する場合でも、ジャズの譜面は表現についてはとても全てを記譜できるものではありません。譜面に表現できない部分、各奏者の解釈に委ねられる部分が多々あるのです。しかも、全員が違う譜面を演奏するのですから、他の奏者と音ののタイミング揃えたり表現を統一したりする事より、各々が創造性を持って自由に表現するという姿勢で演奏に臨むことが大切となります。

ジャズのリズムはメンバー全員でつくるもの!

「そんなこと言ったって、何かリズムの基準になるものが無いとアンサンブルにならないでしょう?」 皆さんはこのように考えるのではないでしょうか?そして、その基準をバンドの中で一緒に演奏するドラムに求めようとします。 「リズムはドラムに合わせよう」という考え方になるのです。一見真っ当な考え方のようにも見えますが、ここで少々考えていただきたいのです。

  • ドラム奏者は他の奏者の基準になる為に演奏しているのか?
  • ドラムの演奏をメトロノームの代わりにしても良いのか?
  • バンドのリズムがおかしくなる事があったらドラマーのせいにしてしまうのか?

これはドラマーの立場から考えてみたら、大変に失礼な話だと思いませんか?私、鈴木学は決して上記のような考え方には賛成できません。リズム、テンポに関して、ドラマーに責任を押し付けるのではなく、バンドのメンバー皆で造り上げるのが当たり前だと思いますし、そのように心がけた方が、間違いなくバンドのサウンド全体が向上するということを体験的に知っています。ドラムだけにリズムを任せるより、バンドのメンバー1人ひとりがリズムを表現した方がバンド全体ののりが良くなる・・・、すごく当たり前の事だと思いませんか?

リズムをリズムセクションに頼るのは・・・

リズム、テンポ

前述のようにジャズアンサンブルの編曲では、管楽器の譜面には音符が記されていて、具体的に演奏する音がほとんど指定されています。しかし、ドラムに加えてピアノ、ベース、ギターのような所謂リズム・セクションの譜面には、 コードネーム(和声シンボル)中心に表記されていることがほとんどです。ということは管楽器はあらかじめ演奏するメロディーが決められているけど、リズムセクションは具体的にどのような演奏をするかは譜面上指定されていない状況、つまり即興で演奏するということになります。

 

メロディー奏者がリズムセクションの音を聞いてそれにタイミングを合わせようとしても、彼らは即興で演奏している為、どんなフレージングにするか?、何拍目にアクセントを入れるか?等、事前に決めていません。そもそもリズムセクションは、メロディー奏者が演奏するメロディーを聞きながら、それに対応する演奏を即興的に創り上げるのです。

 

ということは、リズムセクションが具体的にどういう演奏をするのかは、管楽器奏者からすると事前に分からないという事になります。もしも、管楽器奏者が自身の演奏のリズムについて、リズムセクションの音にタイミングを合わせにいくことで形作ろうと考えていたとすると、期待通りの箇所でリズムセクションから音が発せられなければ、いきなり演奏できなくなってしまいます。ならばと、リズムセクションのメンバーに管楽器のリズムの基準になるような演奏を、いつも全く同じ内容になるようにやってくれと頼む、というのもおかしな話です。リズムセクションの各メンバーは本来即興で演奏するものなのですから・・・。

 

管楽器奏者の皆さん、リズムセクションにリズムのタイミングを教えてもらおうとしても、 そこに期待通りの音は出てこないかもしれないのだ、という意識で演奏に臨みましょう。

 

実際のアマチュアのバンド演奏では、リズムセクションのメンバーのジャズに対する経験が少ない為、事前に演奏する内容を全て決めて練習するという事も多いかと思います。しかし、その場合でも上記のような本来のジャズアンサンブル、リズムセクションは即興で演奏する事を視野に入れておいてください。そして管楽器はリズムセクションにリズムを委ねないという姿勢で練習に臨む事、それがバンドのノリを良くしていく為に重要な事です。次回に続く