「音」と「音色」の違い

私、鈴木学は相変わらず、セカンドワークとすべく、日々写真撮影に取り組んでいます(詳しくは個人サイト内ブログで・・)。そして、写真を撮り続けるほどに、写真と音楽の類似点が見つかります。今日もサックスサクソフォン)その他、楽器の音色について思いを巡らせている際に一つの気づきがありました。

「作品性」がある写真を撮りたい!

例えば、上の写真は今日私が撮ってきた花菖蒲の写真ですが、このように何か被写体を写真に収めようという際、まずはカメラを向けてシャッターを押せば、とりあえず写ります。少なくとも画面の中に花が収まってさえいれば、花を写したことになります。しかしながら、それは写しただけ、もしくは画面内に花が写っているだけです(ちなみに先に紹介したブログページで、過去記事をご覧いただくと、私が写真撮影を始めた頃の「写っているだけの写真」をご覧いただけます・・汗)。

もちろん、写っているだけの写真では、到底満足できませんから、もっと美しく、加えて作品性のある写真を求めて腕を磨いていくわけです。上の写真でも、メインの被写体の背景をどうするか、そして、開花が進む花菖蒲園の雰囲気を表現しようと考えています。もちろん、メインとなる花を美しく立体的に写すことも必須と考えて、様々にカメラを調整します。

・・なんて偉そうなことを言いつつ、実際はまだまだ未熟で、およそ作品と言えるような写真は撮れていません。それでも、後に続ける「楽器の音色」の話の理解を深める例え話としては、分かりやすい例だと思うのです。現代ではほとんど全ての人がカメラを持ち歩いています。そう「スマホ」ですよね!何も考えず、どこかに向けてシャッターを切れば、とりあえず何かは移ります。しかし、少なくとも「何を撮ったのか?」を写真を見る人に伝えるには、被写体にもっと近づくなど、最低限の工夫が必要になるはずです。

雑音⇒音色

撮影者がきちんと意図をもって工夫しつつ、シャッターを切ることで、カメラに写真を写しとれます。そして、「カメラ」を「楽器」と置き換えると、非常に近い話になります。私は常日頃から、生徒さんに対して「単なる『音』と『音色』は別のものですよ」とお伝えしています。

「楽器から音を発したら、必ず音色になる?」、答えはもちろん「No」です。楽器から音を出しても、雑音にしかならない可能性は大いにあります。それが一番わかりやすいのは、ドラム等の打楽器です。加えてピアノのような鍵盤楽器でも、同様でしょう。

木の棒、ステックを両手に、生まれて初めて実物のドラムセットの前に立った子供の姿を思い浮かべてください。どういう展開になるか容易に想像がつきますよね?子供は音が出るものを面白がります。たちまち、叩き方もリズムもへったくれもない、太鼓の連打が始まるはずです。これは間違いなく「最悪レベルの騒音」でしょう。よほどの天才児でない限り、音楽経験のない子供の前に打楽器を置いたら、こうなるはずです。

しかしながら、そのドラムセット、打楽器の前に打楽器演奏の名手が座ったらどうなるでしょう?思わず身体が動きだしそうな心地よいリズム、そして聞き手の体に心地よい振動が伝わってくる太鼓の音色・・。そう、子供が無秩序に叩き散らしていた際は「音」だったのに、名手が叩く(奏でる)と「音色」になります。これこそが楽器演奏の本質なのですね!

演奏者が音色を創り出す!

打楽器奏者、ドラマーは、演奏中リアルタイムで、脳内に太鼓、シンバル等、打楽器の音色を想像(イメージ)しつつ、実際に奏でられた音色を聴きとることで打楽器の音楽を創造(クリエイト)していきます。これが「演奏する」という行為です。これはピアノのような鍵盤楽器、もちろんサックス(サクソフォン)のような管楽器、弦楽器、あらゆる楽器で同様です

楽器の演奏を、「楽器を正しく操作して、譜面に記された情報通り正確に音を並べること」だと考えている人が多々いますが、これは大きな勘違いです。そもそも、仮にそうだとすれば、人間よりもコンピューターの方が「巧みに演奏できる」事になってしまいます。さすがにそうは思えないでしょう?

演奏者が、サックスの音色を想像しつつ、自分の楽器から奏でている音を耳にいれながらコントロールすることで、音楽が創造されていきます。つまりサックスの音色になるという事です。それに対して、アンブッシュア(口の形)、呼吸法、演奏姿勢、その他身体の使い方、何拍吹き続ける、何拍目に発音するかといった音符の情報、これらばかり考えて楽器を扱っていたら、「音色」になるでしょうか?

実はこの後者の状態は、先ほどの写真撮影の例で例えれば、○○という撮影法、○○構図、そしてこの場合のカメラの正しい設定、といったように様々な技法を用いることばかりに固執するあまり、被写体や、ファインダー、モニターをしっかり見ていないようなものです。これでは撮影者の意図が写真として表現され、鑑賞者に伝わることは無い、つまり写真にならないでしょう。

カメラを手にシャッターを押せば、いつでも写真になるのか?これと同様、楽器から音を発すれば絶対に音色になるのか?という問いは、楽器演奏に取り組む者にとって非常に重要なポイントだと思います。私自身、常に忘れることなく、しっかりとこの問いを心に留めておきます。皆さん、是非参考にしてくださいね!