ジャズバリトンサックスの世界②

前回のブログ「ジャズバリトンサックスの世界①」では、バリトンサックスのダンディーさ、ムーディーな一面に焦点を当てて、名奏者をご紹介しました。今回は一転して、ゴリゴリ系(?)バリトンバリトンサックスならではの低音、そしてグロテスクな魅了を存分に表現した名奏者を、ご紹介します。

正統派(?)ジャズバリトンサックス!

まずは正統派、ビバップバリトンサクソフォン)奏者、チャーリー・パーカー直系(本当に知り合いだったかどうかは分かりませんが・・)バリトン吹き、セシル・ペインをご紹介します。フレージングのセンス、表現その他、いかにもパーカーをお手本としたことが伝わってくるプレイヤーです。

次に、ウッディー・ハーマン楽団、「フォー・ブラザーズ」系のサウンド表現(当時のスタンゲッツら白人サックス、クールテナー系奏者らによるソフトなサウンド)をしつつ、ジャズバリトン史上指折りの衝撃的なダイナミックなプレイで、今尚、多くの奏者から称賛されている名手、サージ・チャロフをご紹介します。とにかくお聴きください。凄いです!

最後に、正統派ジャズ史の中の発展形として、フュージョン系ジャズで活躍したバリトンサックス、ロニー・キューバーをご紹介します。この方、とにかく何でもできます。フュージョン、ファンク、もちろん正統的4ビート、なんでもござれです!とにかく迫力があってゴツイ、強靭なバリトンサウンドでゴリゴリ吹きます。ある意味、ご紹介している中で、最もバリトンサックスらしいプレイを聞かせてくれる奏者かもしれません。

横綱級、バリトンサックス!!

最後に、ゴリゴリ系の中でもとびっきりヘビーな演奏を聞かせてくれる奏者たちをご紹介します。まずはこの方、ペッパー・アダムスです。この方の場合とにかくグロテスク。ムチャクチャアクが強いプレイです。バリトンサックスファンにはたまらない演奏を聞かせてくれます。もちろんテクニックも素晴らしいのですが、ジャズバリトンの世界にこういったプレイスタイルを持ち込んだスタイリストとして、今尚、多くの奏者から、お手本とされています

次にご紹介するのは、ニック・ブリグノラです。恐らくジャズリスナーの中でも、あまり知名度は高くないでしょうが、この方、とんでもないテクニシャンです。バリトンサックスを軽々と吹ききります。その上、フラジオ音(通常の運指では出せない高音)を自由自在に吹きまくります。とにかくすごいです!

実はペッパー・アダムスとニック・ブリグノラ、この二人は共演アルバムを残しています。その名も「バリトン・マッドネス」!!その中でも、こちらのトラックでは、凄まじいバトルを聞かせてくれています。恐らくジャズバリトンサックス史上(ひょっとしたらジャズサックス史上?)、最も壮絶なバトル演奏でしょう!とにかく息つく間もなく、見事なフレーズが繰り出されます。皆さん、心してお聴きください。

この両者とも、残念ながらすでに亡くなっていますが、正統派後継者と目される名手が、今も活躍しています。Gary Smulyan ゲイリー・スマリアンです。実にバリトンらしい、正統派ゴリゴリバリトン(?)が聴けます!

いかがでしたでしょうか?前回のブログから2回、ジャズ史上に大きな足跡を残した、ジャズバリトンの名手達を紹介してきました。私、鈴木学(かつてプロのビッグバンドの現場で、バリトンを吹いていました)自身、久々に聞き返した演奏も多々あったのですが、やはり格好良いですね。アルトサックステナーサックスと比べると、バリトンは若干地味に思えるかもしれませんが、実際は聞いて楽しく、吹いて楽しい分野です。もしも、バリトン未体験の方がいらっしゃいましたら、ぜひトライしてください!きっと病みつきになりますよ!!