「~でなければならない」って本当?①

鈴木サキソフォンスクールで、日々サックスサクソフォン)、フルートクラリネットレッスンしていると、ほぼ毎日、誰か生徒さんの口から「~でなければならないと思っていました」という言葉を聞きます。ほとんどの人が音楽、楽器演奏について「~でなければならない」という考えをいくつか信じ込んでいるようです。

音楽に「~でなければ」は存在しない

私、鈴木学はもうかれこれ15年以上、生徒様目線での楽器演奏について研究してきましたが、その結果としてハッキリ断言できます。音楽に「~でなければならない」は存在しません。自ら楽器演奏に臨む際は、特にそう言えます。

実は生徒様が「~でなければならない」と信じ込むポイントは、大きく分けて3種類になります。まずは楽譜、譜面に関する点、次に音楽の演奏上のルール(?)について、そして楽器の演奏法、身体的な部分についてです。今回はこれらについて、簡潔に「~でなければならない」と考えるのが誤りであることを指摘したいと思います

メトロノーム的「正確さ」は無用

ほとんどの日本人は、楽譜、譜面はものすごく強制力のあるものと信じ込まされています。「楽譜は絶対」、そして「楽譜の指示通りに『正確に』演奏すべし」と考えている人が大半です。この「正確に」というのが曲者で、特にリズムについて、時間的、数値的に正確さが求められるもの、つまり「拍の長さは正確でなければならない」と解釈されている事が多いのですが、それは本当でしょうか?

実際の演奏では、プレイヤーの思い浮かべた旋律を、正確に楽器に伝え音として再生する技術は、ある程度必要となります。さすがにこれが無いと、色々と支障が生じます。しかし、メトロノームのように正確に拍の長さを均質にするという意味での「正確に」は、全く無用です。この両者の区別をはっきりさせることが非常に重要です。

譜面って何?

そもそも、作曲者、譜面の作成者が、最初に旋律を思い浮かべた時点では、まだ記号化、つまり音符に変換されていません。あくまで鼻歌的な旋律のイメージにすぎません。それを忘れないように記録、書き留める段階になって、音符、楽譜に変換します。

この段階で、旋律に含まれる同じくらいの音価(音の長さ)の音は、単一の音符(例えば、4分音符)に統一して変換されます。という事は、作曲者がもともと思い浮かべていた旋律に含まれる音は、同じ4分音符として表記されていても、寸分の狂いもない同一な音価であるとは限らないのです。

こういった楽譜、譜面の成り立ちから言って、「拍の長さは正確でなければならない」なんて決まりはありません。むしろ作曲者の立場を慮れば、恐らく拍ごとに適度な音価の揺らぎがあったであろう、もともと彼が思い浮かべたであろうメロディーを再現することが、演奏者の目標となります。だからこそ西洋音楽の世界では、演奏者の仕事は「リクリエイト(再創造)する事と、言われているのです。

(次回へ続く)