ライブ・コンサートの選曲

ジャズ、ロック、クラシックのライブ、コンサートの選曲

音楽のライブ、コンサートを企画しようとする際、ジャズロッククラシック等、演奏するジャンルの区別なく、悩みの種になるのが、どんな楽曲を取り上げてステージを構成するか?、選曲プログラムについてでしょう。

観客、聴衆にとって満足できるコンサートになるか、出演者が盛り上がって楽しめるステージになるか?選曲の内容は、その成否を分ける大きな要因となりますから、本番当日の企画を受け持つ者にとって、どんな楽曲を取り上げ、演奏順を構成するかが、非常に重要な問題となるのです。

皆が知っている曲ばかり並べたら?

音楽コンサートの選曲に話になると出てきやすいのが、「観客が親しみやすい曲」という考えです。もちろんステージに立つ以上、観客の存在を無視した選曲はありえないのですが、この「親しみやすい」という点に固執すると、観客、聴衆にとってイージーすぎる、陳腐な、聴きごたえの無い公演となってしまいます。

ジャズ、ロック、クラシックのライブ、コンサート

実際は、この「観客が親しみやすい曲」という考え方そのものについては、方向は間違っていません。しかし大半の演奏者は「親しみやすい曲」の定義を間違えています。例えば「親しみやすい曲=皆が知っている有名曲」と決めつけている例は非常に多く見られます。

もちろんコンサートの選曲の中に、何割か有名曲が含まれているのは、大抵の聴衆にとっては好ましい事でしょう。だからと言って、全てを有名曲で埋め尽くす必要はありませんし、もしもそのようにステージを構成したら、観客にとってかえって退屈なコンサートになってしまいます。

例えば、誰かの話を聞く際、その内容が以前に聞いたことのある話ばかりだったら、間違いなく退屈してしまうでしょう?もちろん何回聞いても興味深い話、感動する話はあります。だからと言って、全て聞いたことのある話ばかり続けられたら、よほど話術が巧みとかでない限り、聞き手が集中力を保ち続けるのは困難になります。

だからこそ、皆が知っている有名曲ばかりでなく、耳なじみが薄い曲を交えつつ演奏を進める方が、聴衆にとっては良い意味の緊張感を保つことになるのです。

この「耳なじみが薄い曲」について、私の場合、「初めて聞いた観客にも、その魅力が伝わりやすい楽曲」という点を意識して選曲します。ただしこれは単純に「分かりやすい」とか「簡単な」と言う意味ではありません、そういう曲ばかり並べたら、やはり観客は退屈してしまいます。旋律が美しい、和声的に新鮮味がある、リズム的躍動感がある等々、楽曲の魅力は様々です。そういった楽曲ごとの特徴を踏まえ、それらの魅力を聴衆が感じやすくなるように選曲、構成を工夫するのです。

ノスタルジーに依存していないか?

それから「皆が知っている有名曲」と考える際、観客、聴衆の年齢層、ターゲット層が、どれくらいのになるのか考慮する必要があります。人が記憶している、知っている、懐かしく覚えている楽曲と言うのは、主にその人が青春時代に耳にしていた楽曲を意味します。大抵の場合10代から30代前半にかけて聞いていた楽曲を人は記憶していて、一生涯の間、それらが「聴きたい曲」となるものです。つまり人間は過去のノスタルジーによって好みの楽曲がある程度定まります

ジャズ、ロック、クラシックのライブ、コンサート

クラシックの場合、そういった年齢別の好みの差は生じにくいでしょう。しかし、ジャズはかなりその影響があります。ジャズの黄金時代1950~60年代、もしくはその若干後になって青春時代を過ごした人にとって、ジャズの名曲は思い出の曲です。しかしそれ以外の人にとって、例えばもっと年配の人にとっては「小難しい曲」、若い人にとってはひとくくりに「懐かしい雰囲気の曲」にすぎないのです。

ロック、ポップス系の音楽であれば、更に好みの差が如実に現れます。例えばカバーソングを取り上げようという場合、しかもそれが「皆が知っている曲」と言う理由であった場合、観客の年齢層を5歳分見誤ると、とたんに「?」となってしまいます。実際、ちょっと歳の差があるだけで「思い出の曲」の話題がかみ合わないのはよくある事です。「皆が知っている曲」、「皆の思い出の曲」、「皆が好きな曲」を見つけるのは非常に難しいのです。

人は自分の好きな曲、思い出の曲を聞くと、それだけで幸せな気持ちになります。だからこそ、ライブ、コンサートで聴衆の好みに合致した楽曲を選曲できたら、それだけで客席が盛り上がるのは間違いありません。しかし、残念ながら、客席の中で年齢の幅が生じる事が大半である以上、全ての観客の好みに合致した楽曲を揃えることはまず無理なのです。

しかも、もしも仮に観客のノスタルジーを完全に満たす選曲ができて、客席が大いに盛り上がったとして、演奏者はそれで幸せを感じるのでしょうか?この場合、観客、聴衆が喜んでいる対象は、各々の過去の思い出です。必ずしも今、目の前の演奏に対してではありません。観客は若き日の思い出、当時聞いていた音楽、演奏を思い出してノスタルジーに浸るのです。もちろん聴衆の幸せそうな姿を見て不満に思う演奏者はいないでしょうが、私、鈴木学ならば、かなり複雑な心持になるでしょう。

ライブ・コンサートの選曲は奥が深い

...と、ここまで書いてきて、改めてコンサートの選曲は非常に奥深く、難しい問題だと再確認しました。例えば、今回否定気味に指摘した「有名曲ばかりでは退屈な公演になりやすい」、「ノスタルジー頼みの選曲の問題点」についても、例えば同じ世代の限られた年齢層の観客のみを対象に、ノスタルジーを共有できるバンドメンバーばかりで演奏したライブであれば、(アマチュアの公演という枠組みの中でですが)それはそれで大いに盛り上がる事が予想されます。

「どんな音楽ジャンルか?」、「対象の観客は?」、「どんな会場で?」等々、コンサートの選曲に影響する要因は多岐にわたります。そのすべてについて考えを進めることは困難なので、あくまで一般論の範疇に止めておきたいのですが、それでも今回は既に長くなってしまいました。回を改めたブログで、「聴衆にとっての楽曲の聞きやすさについてどう考えるか?」、それから選曲のバランスについて、例えば「オリジナル、もしくはそれに準じる楽曲の取り上げ方」について、考えを進めたいと思います。次回をお楽しみに!