楽しく演奏するためには・・

アルトサックス(サクソフォーン)

鈴木サキソフォンスクールの教室でレッスンをしていると、演奏技術を高め、楽器を巧みに操ることができるようになれば、それだけでサックスサクソフォン)を演奏できるようになると、勘違いしている生徒さんが時折いらっしゃいます。


もちろん楽器の演奏には、最低限の演奏技術が必要となります。もしも、プロとして生計を立てることを目指すのであれば、それこそなんでも演奏できる必要がありますから、かなりのレベルの演奏技術が必要となるでしょう。

しかし、アマチュア(愛好家)として、楽器演奏を楽しみたいという事であれば、それほどハイレベルな演奏技術は必要ありません。もちろん、技術があればそれに越したことはないのですが、今現状の技術で楽しめる楽曲を選んで演奏を楽しむ分には、そこそこのテクニックがあれば十分です。

とは言うものの、実際に楽曲を演奏するためには、演奏技術の他に音楽を創り上げる能力、「音楽力」が必要となります。多くの方が、誤解しているのはこの点です。例えば、ブログを書こうという際、パソコンを扱うことができても、語学力が無ければ、つまり考えている物事を言語化する力が無ければ、何も書けないですよね?(その前に、そもそも書きたいことが無ければ書けませんが・・)

ならば、どうすれば「音楽力」が身につくのでしょうか?もちろん、音楽未経験のまま、いきなりこれができる人はいません。何度も音楽を創り上げた経験を重ねるうちに、音楽力が高まっていく、つまり上達していくのですが、まずは通常、人間が楽器から音楽を奏でる過程を、段階を追って解説します。

旋律、メロディーをイメージする

最終的に、楽器から音楽を奏でることを目指すのならば、まずは脳内で旋律、メロディー、音楽を思い浮かべることができている必要があります。これが無いと、「楽器の演奏」ではなく、「楽器から音を出す作業」になってしまうのです。

ならば、どのようにすれば脳内に音楽をイメージできるようになるのでしょうか?まず音楽経験が全く無い、もしくはほとんど無い人の場合ならば、今から演奏しようという楽曲の元になる演奏、デモ演奏を探してみましょう(もしくはそういった音源が見つかる楽曲を練習することからスタートしてください)。


そして、まずはその音源を徹底的に聴き込んでください。旋律内の一音一音の響きを脳内に刷り込むように、何度も何度も繰り返し聞くのです。

何度も聞きなおす中、時折、主旋律の音以外の伴奏楽器の音、例えば、ベースピアノギターの音も聴くように心がけましょう。特に旋律に伴う和音(ハーモニー)の雰囲気、質感を感じつつ旋律を聴く事が大変重要です。

ハミングで音程(ピッチ)を歌う

次に、脳内に刷り込んだ旋律のイメージを、声に出して歌ってみましょう。歌い方はハミング(ン~~)がよろしいかと思います。デモ音源が無い、楽譜から旋律の演奏を試みる場合は、自分の楽器でごくごく簡単に、音符をさらって脳内に旋律のイメージを「何となく」創った後に、声で歌う練習に取り組んでください。

この際に重要なのは、リズム、拍の長さを正確にすることにこだわらないことです。むしろ、各拍の長さはどうでもよいので、各音の音程(ピッチ)をしっかりと定めていくことがこの練習過程の目標となります。一音一音に十分な時間をかけて、声でハッキリと音程を歌う事を目指しましょう!

実は、前段階の「脳内で旋律をイメージ」することについて、具体的に正確なイメージを創り上げることができる人は、非常に限られます(例えば、これができないとクラシックの指揮者にはなれません)。イメージはあくまでイメージ、かなりあやふやなものなのですね。


だからこそ、具体的な音として、ハッキリと声にしていくことが重要です。音声にしてみることで、あやふやなイメージを、はっきりとした実態に変換していくのが、この過程の目的となります。

ここでのポイントは「正しいピッチ」を求めないことです。例えばチューニングメーターを使ったりすると、かえってよろしくありません。各音、個別の正しいピッチではなく、旋律の流れの中での相対的なピッチを、流れの中で「美しいと感じるピッチ」を定めていくことを目指しましょう!

楽器の音色を聴きとる

鈴木の著作です。クリックで購入ページへ!
鈴木の著作です。クリックで購入ページへ!

ここまでできたら、後は具体化された旋律のイメージを、楽器で奏でていくだけです。しかしここでも非常に重要なポイントがあります。


本来、楽器の操作はほぼ無意識で行われるものです。そこそこのレベル以上の演奏者ならば、脳内の音楽を楽器から再生させようと試みる際に、楽器の操作の手順、例えば、サックスサクソフォン)の場合ならば、「どのようにブレス、息を吸って、どの指を押さえて、運指の手順はこうだから」なんて考えながら演奏することはありえません


実は、楽器演奏に対して苦手意識のある人ほど、このように楽器を操作しようとしてしまいます(詳しくは私の著作「楽器演奏が楽しくなるココだけの話」を是非ご覧下さい)。

声でハッキリと音程を歌う歌う段階がクリアできていれば、楽器を手にした際に考えることはただ一つ、「しっかりと音色を聴きとること!」これにつきます。せっかく創り上げた楽曲のイメージを、しっかりと楽器から再現するには、とにかく楽器からどのように音が出ているのか、しっかりと耳で聴きとりつつ演奏することが何よりも大切なのです!そのように楽器と向き合えば、極めて短時間で、運指その他、操作が自然に自分のものになっていきます。

そもそも、皆さんがサックス、楽器を手にしたのは、音を、音色を楽しむためだったはずです。間違っても正しい操作、正確な演奏が目的であったはずはないですよね?旋律、音楽をしっかりとイメージして、それを声で更に具体化し、楽器で奏でてその音色を楽しむ・・。これこそが楽器演奏なのです

  1. 脳内でイメージする
  2. 声ではっきりと歌う
  3. 楽器の音色をしっかりと聞く

この3つをしっかりと実行してください。これが当たり前になれば、目に見えて楽器演奏がレベルアップしますよ!是非、お試しを!