ジャコ・パストリアスについて考える

昨日、天才エレキベーシスト、ジャコ・パストリアスの伝記映画『JACO』を鑑賞してきました。全体には、彼の天才ならではのエキセントリックさ、それゆえの悲劇を映し出していたのですが、私、鈴木学は少々異なった目線で鑑賞していました。

なぜ、天才「ジャコ」が誕生したのか?

ジャコが活躍したのは、主に70年代から80年代前半にかけてです。ジャズ史全体から言えば、すでにジャズが音楽的に高度に成熟しきっていた時代です。

 

にもかかわらず、ジャコの生い立ちからキャリア初期にかけての紹介の中で、「アカデミックな教育を受けた」、「ジャズ学校で勉強」云々といった話は一切ありませんでした。むしろ、ロック、ファンク系のバンドに参加することからキャリアをスタートしたことが紹介されています。つまり、ジャズ理論についてきちんと勉強したかは、明らかではありません

それでも、ジャコは当時最先端のバンド、ウェザー・リポートで音楽的、和声的に高度な楽曲を自在に弾きこなし、ハーモニクス(倍音)奏法を駆使したソロ演奏では、複雑な響きの和音を弾きこなしています。

恥ずかしながら今まで、ジャコのプレイを真剣に聴いたことが無かったのですが、今回映画の中で聞いて、明らかに天才的な奏者であることは理解できました。革新的な奏法、そしてエレキベースを駆使した斬新な音楽、ともに驚異的なものです。

映画の中で、ジャコがステージ以外でベースを触っているシーンを見ると、まるで子供が玩具を触っているような印象を受けました。加えて、ハーモニクス奏法を試行錯誤の上確立した由、そして後進の奏者への助言として、とにかく様々なジャンルの音楽を聴くようにという自身の話が紹介されていました。

革新者は常識に縛られない!

以上の情報から推測すると、ジャコは当時のジャズメンが皆共有していたジャズ理論(もしそれがあったとするならば、ですが)、常識から遠い立場だった、つまりジャズ理論を知らなかったからこそ、誰もが思いつかなかったような革新的なプレイができたのではないでしょうか?

ジャコ以外にも、ジャズ史上の革新者と言われる奏者で、理論に明るくない人はいます。例えば、レスター・ヤング(Ts)はコード理論の知識はなかったそうですし、リー・コニッツ(As)によれば、かのチャーリー・パーカーもコード理論は知らなかったのではとの事です。

既存の知識、理論、方法論に縛られないからこそ、革新的な音楽を生み出せたのですね、。この映画を鑑賞した後、そんなことを考えていました。ジャズファンならば、是非見ておくべき映画だと思います。皆さんも、ぜひどうぞ!