最も厄介なもの『音程』①

サックスサクソフォン)、フルート、クラリネット等楽器で音楽を演奏する際、重要な要素が2つあります。それは、『リズム』と『音程』の2つなのですが、皆さんはこの中でどちらを重視していますか?もちろん、どちらもそれぞれに欠かす事のできない重要な要素ではあるのですが、この中でどちらか選ぶとすれば私、鈴木学『音程』こそが重要な要素であると考えています。

 

例えば、テレビで歌番組を見ているとき、歌手のリズムが少々ずれてもほとんど気になりません。しかし、音程を外した歌声が聞こえてくるとスゴク気に障る、なんてことはありませんか?そう、リズムのミスよりも音程のミスの方が遥かに観客に伝わりやすいのです。

サックスの音程はあやしい?

このように『音程』は演奏上大変重要なポイントなのですが、実はサックスは音程がとても不安定な楽器です。上下どちらのオクターブの音でも構いませんので、ラ、シ、ド辺りの音を、喉で『オー』と低い声を歌うイメージにした上で、アンブッシュアを緩めた状態で発音してみてください。いかがでしょう?通常よりも半音程度低い音程の音が出てきませんか?そう、サックスは吹き方しだいで、音程が劇的に変わってしまう楽器なのです。

 

例えばピアノなら、同じ鍵盤を誰が叩いても必ず同じ音程の音になります。つまり、音程に関しては楽器に任せておけます。(その代わり、調律自体がずれていると奏者自身では修正不可能です)これに対して、サックスは奏者が音程を楽器任せにすることはできません。奏者自身が音程をコントロールしなければならない、ということです。

 

サックスの楽器自体の音程の不安定さは、演奏上厄介なことではありますが、裏を返せば音程を様々に変化させる表現がつけやすい、というメリットにもなります。表現の幅の広さは、サックスの大きな魅力です。

ハイピッチを目指せ!

ハイピッチ

サックスの音程は、大変変わりやすい不安定なものですが、一つだけ決まった音程の変化の性質があります。音程を下げていく分には、ほぼ際限なく下がっていくのに対して、音程を上げる事に関しては、ある一定の音程以上には上がりません。マウスピースのネックへの差し込む深さを変えず、そしてアンブッシュアの締め具合が同じ程度であるという条件下では、一定以上から上へは音程は上がっていかないのです。

 

サックスの音程を安定させるには、こういった音程の性質を利用しない手はありません。つまり、音程を安定させる為には、 『常にハイピッチを目指して演奏する事!』 これが大変重要なのです。

 

因みに、このように演奏すると、音色にしっかりと整った倍音が乗りやすくなり、音色自体の響き、艶が増します。良いことばかりなのです! さて、今回から書き始めた『音程』編、次回はもっと具体的な演奏法について解説していく予定です。サックスの音程をコントロールする上で、最も大切な要素『リラックス』について等、様々に解説します。しばし、お待ちくださいませ!

 

【今回のポイント!】

  • サックスの音程は奏者自身がコントロールするものです!
  • 今の楽器セッティング状態の中での最高のハイピッチを目指しましょう!